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「経営プロフェッショナルが日本を明るくする」
(クライス&カンパニー 入江氏・IGP X代表 小寺 対談)

2021.3.16

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(2021年2月25日 クライス&カンパニー 特集記事)

スタートアップと大企業が共に成長する世界を構築すべく、2020年3月に設立されたIGP X。スタートアップ投資によるオープンイノベーションを本気で狙う大企業とパートナーシップを組み、投資先スタートアップへ経営プロフェッショナル人材を供給することでスタートアップの成長と事業協創を実現する。この活動を通じて日本の未来を創るスタートアップと経営プロフェッショナルを増やす仕組みの構築を狙う、同社代表取締役の小寺規晶氏に、IGP Xのビジョンや同社でキャリアを積む魅力についてお話を伺った。

戦略コンサルタント・ケンブリッジ大学・経営プロフェショナル、順風満帆に見えるキャリアの根幹は「苦労とワクワク」

入江:小寺さんのご経歴について、アクセンチュアに入られた経緯からお聞かせください。

小寺:懐古録みたいな話ですが、大学時代はM&A弁護士を目指していましたが、英語が全然ダメで、それでは活躍できないと思い、米国に留学しました。判例六法をスーツケースに入れて。折角なら新しいことを、と経営学を受講したのですが、そこでルイス・ガースナーの「巨象も踊る」やジャック・ウェルチの「勝利の経営」といった本と出会い、アメリカには経営のプロという仕事があると認識し、ジョン・グリシャムよりこっちだ!とワクワクしました。10年後には日本でもスタンダードになるんだろうなという妄想の中で、戦略コンサルタントという仕事が経験の量と質で最適ルートに見えました。アクセンチュアを選んだ理由は、当時の戦略グループのリードだった西村裕二さんの人柄と、当時のアクセンチュアは戦略コンサル業界では挑戦者枠でここからトップ獲ろうぜという雰囲気がしっくり来たのが大きいです。

入江:MBAに行かれた理由は何ですか?また、行かれてみていかがでしたか?

小寺:「今やらないと一生できない」という人生の選択を初めて認識したのがMBAでした。当時は、戦略コンサルの仕事が楽しくて、遊びも勉強も経営プロになることも「いつかやる」と傍に置いていたのですが、MBAは年齢制限があるので。アクセンチュアのキャリア的にはMBAに行っても全くプラスではなかったのですが、とりあえず準備を始めてから、どんどんワクワクしてきてしまい、MBA行きを選択しました。 行って良かったのは、これまでの経験を経営全般の体系知の中に組み入れていくことができたことですね。一揃えの土地勘ができた感覚はありました。あとは、ケンブリッジ大学という伝統とイノベーションが融合する環境で、起業家や老舗事業の継承者、国の未来を担うエリート階級の人と交流する日々は刺激的でした。それまでは「自分・キャリア」の話が多い環境でしたが、「国・世の中を良くしたい」という視座の人が多く、すっかり感化されましたね。経営プロフェッショナルという当初のコンセプトを再認識したのもこの時期でした。

入江:当時選択肢は多数あったと思いますが、ユニゾン・キャピタルの投資先に行ったのはなぜですか?

小寺: 30代前半で経営の打席に立つ方向性に、光を当ててくれたのがユニゾン・キャピタルさんでした。帰国当初は「30代で経営」という曖昧なテーマで、事業経験もなく、初の転職活動、なかなか的を得ない状況でした。そんな中、ハンズオン投資の文脈でユニゾン・キャピタルさんとお会いし、バシッと「小寺さんは投資がしたいの?経営がしたいの?経営だったらこちら側じゃないよ、僕たちはプロデューサーで、経営者に活躍してもらう側だから」と一刀両断。もちろん採用面接としては大不合格ですが、「経営プロ、あるんじゃない?」と。知覚できると、ユニゾンさんの投資先にも元スシローの加藤智治さんやミスターミニットの迫俊亮さんといった方がいて活躍されていることが鮮やかに見えるようになり、「あるじゃん、あるじゃん」とワクワク。「新しい投資先に小寺さん行ってもらえませんか?」と誘われた時は素直に嬉しく、ほぼ即決でした。 ただ、参画当初は全く期待に応えきれていなかったですね。ユニゾン・キャピタルさんに就職したわけではないので、全くの個人として投資先に入って、肩書きやら年収やら年齢やらお手並み拝見な雰囲気やら、足場がふわっとした中で空回りして、どんどん視点が「誰も守ってくれないから自分で守らなきゃ」になっていく。それでは人は動いてくれないし、会社は良くならない。段々と「会社が成功すれば自分も成功できる」と変化し没頭できるようになり、すると社員や株主の皆さんに頼られ、前に進み、ますますのめり込むいう好循環になりました。この状況まで来るとかなり中毒性があります。

入江:アクセンチュアで昇進、MBAと順風満帆で来ていた中で初めて苦労されたのですね。

小寺:全く順風満帆ではなかったですが(苦笑)。アクセンチュアの採用面接で「君は優秀だけど、苦労を知らないね。もったいない。」と西村さんに言われたことをずっと大切にしています。アクセンチュアで順調にキャリアを重ねられたのも、将来的な期待値込みで守っていただいていたことの結果だったなと。個人の経営プロ人材として少しだけ苦労したことで、自分の個性とか得意・不得意が明確になり、逆に結果を意識しやすくなりました。コンサル時代は誰からも賞賛される切れ味に憧れましたが、今は関係者がワクワクしてゴールを目指す仕組みの方がずっと大事ですね。「これをやったら皆幸せになるから俺を信じてよ。でも助けてね。」と言えるようになった。これはMBAでも教わらない、でも核心のようなものだと思います。

「経営プロフェショナルのコミュニティ」の旗を立てて日本を明るくする

入江:Origamiに行かれたのはどういう経緯だったのですか?

小寺:創業CEOの康井義貴さんと会って、「キャッシュレスで日本を明るくしたい」という情熱と彼のチャーミングさにすっかりほだされてしまったのが大きいです。アーサー王と円卓の騎士の様なそれぞれが独立し領域を担う人たちと力を合わせて夢を追うという僕の理想の経営陣コンセプトが当時あって、義貴さんとOrigamiの騎士になれるかなとワクワクしました。そこで見えてくるのは、中小企業とスタートアップって全然違うということ。スタートアップに求められる経営はレベル高いなーっというのが初期の印象でした。戦略に、開発に、資金調達に、採用に、カルチャー・組織づくりに、株主対応に、喧嘩の仲裁に、本当にやらなきゃいけないことが多い。まさに「崖から部品と一緒に飛び込んで、着地するまでに飛行機を組み立てなければいけない」というアドレナリン感ですかね。スタートアップには経営プロが必要だと確信しています。最終的にはOrigamiは無くなってしまいましたが、本当に苦しく、楽しい、鮮やかな日々でした。

入江:素晴らしい経験ですね。その後、IGP X立ち上げを最終的に選んだのは何故ですか?

小寺:なかなかOrigamiの夢から覚めず、色々とお誘いいただきながらもしっくりこず。またコンサルに比べて年収を下げて活動していたので、勝負をかけるにもキャッシュフローって大事だなぁと昼行灯生活でした。色々な人とお話をする中で、大企業のオープンイノベーション苦戦、ベンチャーキャピタルのハンズオンシフト、CXO候補募集、という言葉が目についていて、「スタートアップと大企業と経営プロフェショナルが連動する仕組みがあれば、流れが整いそうだな」と考えていたことを、イグニション・ポイントでぽろっと話しをして「グループ傘下でそれを創らないか、必要なものは用意するから」とお誘いいただきました。自分が新しく創るまでは考えていなかったけど、このタイミングでこれが作れるのは自分だけという状況にも燃えて、経営プロフェッショナルで日本を明るくしてみるかと肚を決めた感じですね。

IGP Xでは経営プロフェッショナルが没頭できる環境を提供する

入江:貴社の事業スキームについて、詳しく教えてください。

小寺:経営プロフェッショナル人材のコミュニティとして創っています。大手企業とパートナーシップを組み、アーリーフェーズのスタートアップと三位一体でバリューアッププランを描き、経営に参画し、実行を協働する流れです。大企業にとっては投資の狙いを理解した人材がスタートアップ側で推進してくれる。スタートアップにとっては、アーリーフェーズでは獲得が難しい優秀な経営人材が参画し、外部のアセット活用や事業開発、組織構築、資金調達を二人三脚で行ってくれる、経営プロ人材にとっては、バリューアッププラン策定からの経営参画機会が得られるというメリットを実現します。加えて、経営プロ人材には、心理的安全性を担保する給与と企業価値向上に連動した成果報酬、経営プロフェッショナル同士の知識やネットワークの相互支援、外部アドバイザーからの助言など、コミュニティを作るからこその環境を仕立てています。

入江:第1弾は、日本ユニシスがCVCのような形で出資するということでしょうか?

小寺:日本ユニシスグループにおける中長期の事業創造を目的とした戦略子会社であるEmellience Partnersと共同して活動しています。志を共有していただいており、IGP Xの株式も保有いただきました。一緒に走りながら、喧々諤々議論して、仕組み・ルールを作らせていただいています。また、日々驚くのは、グループの中にあるIPやアセットの量と質です。人の熱意と資産は時間で蓄積するんだなと感じています。これをスタートアップに融合していきます。アーリーフェーズのスタートアップ投資だけでなく、グループの中で温めていた事業をスピンオフさせてベンチャー企業として育てていくモデルも生まれてきています。

入江:他のファームでも投資や経営者派遣スタイルの会社がありますが、他社との違いは何でしょうか?

小寺:競合はどこだ?ですね(笑)経営プロフェッショナル人材が活躍しやすい環境が整備されれば満足なのでどことも競合していないが答えなのですが、類似した機会では、投資機関のバリューアップチーム、コンサルティングファームのバリューアップサービス、グループ子会社の経営者、の3つでしょうか。大きな違いは、IGP Xは経営プロフェッショナルの集団であることで、シンプルなミッションやカルチャー、制度が実現できることだとと考えています。投資チームとバリューアップチームはどっちが偉いとか、コンサルと経営はどっちがかっこいいとかの議論は存在しません。今後はIGP Xに限らず「自分は生業として何がしたいのか」という視点で、同じ志を持つ仲間で会社が組織され、会社同士が密に柔軟に繋がることで価値を実現していく世の中になると思います。イグニション・ポイントグループは、コンサルティングもインベストメントもそれぞれ独立した組織があるので、そちらがやりたければそちらに所属していただき、連携して価値を出しましょう。という気楽な感じで座組みを整えています。

入江:貴社はスペシャリストよりも経営全般ができる経営人材を投資先に送るのですか?

小寺:IGP Xがメインに対象とするアーリー期はピボットも多いですし、資金力も小さいので、総合格闘技型の経営プロフェッショナルが向いていると思います。起業家が生んで、IGPXが一緒に育て、儲かるようになったらCFOなど各機能のスペシャリストが入り大きく飛躍するという流れを考えています。

入江:小寺さんと近しいキャリアの方が貴社で働く魅力は何でしょうか?

小寺:実体験をもとに組み上げているので、活躍してもらいやすい環境になっていると思います。パフォーマンスが出せるかどうかは「能力×機会×モチベーション」の掛け算だと考えていて、能力が無いのは論外ですが、機会がない中で待っていても結果は出ないし、生活や将来に悩みながら100点を出すのも厳しい。IGP Xでは機会と心理的安全性を提供するので成功の確度が上がり、実績がつくと更にモチベーションと機会が上がる、という好循環のインフラを作ります。もっとも、経営プロ人材は、希少動物みたいな感じで滅多に出会わないので、同じ志を持つ人が集まるという点だけでも面白いかなと思っています。将来、IGP X卒業生が様々な企業の経営者として活躍することを想像するとワクワクします(笑)。

入江:応援しております。最後に、ポストコンサルの方々へアドバイスを一言お願いします。

小寺:アクセンチュアの新卒歓迎ディナーで、当時エグゼクティブ・パートナーの田村誠一さんと同席し、将来は経営をやりたいと言ったら「じゃあ今すぐやればいいのに」と言われびっくりしました。今だと少しわかりますね。自分で選ばない限り「いつか」は来ないので、やりたいことがあるなら早くやった方が良いです。変化が速すぎて、別の場所での準備は次に繋がらない可能性が高く、未熟ながらも旗を立て、もがくことがとても大事だなと。ユニゾンさんの「投資やりたいの?経営やりたいの?(更に僕が付け加えるなら)起業したいの?コンサルやりたいの?」は本質で、キャリアに悩んでいる方は、まずその問いに向き合うことが重要かなと思います。それが決まれば、あとは「早くやりなよ」に尽きますね。

構成:神田 昭子
撮影:櫻井 健司